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 地域資源紹介

つりしのぶ

つりしのぶ

■指定されている場所:江戸川区

「つりしのぶ」とは、竹などに苔(こけ)を巻きつけ、シノブと呼ばれるシダ植物の根をエナメル線を用いて固定させ観賞用にしたものです。軒先に吊るして涼を呼ぶつりしのぶは、江戸時代から庶民に親しまれた夏の風物詩です。芯の形によって様々な形状に作られていますが、球の形に仕上げたものを「しのぶ玉」と呼んでいます。

シノブとは

材料となる「シノブ」(Davallia mariesii)は、シノブ科に属するシダ植物で、日本各地の森林に生息し、地上ではなく樹木の樹皮上や岩の上に生えています。シノブに似たシダ植物に台湾産の「トキワシノブ(Davallia tyermannii)があり、盆栽でよく用いられています。シノブは冬に枯れる夏緑性ですが、トキワシノブはシノブよりも葉が厚く常緑性です。


つりしのぶの製作工程と販売

つりしのぶ
つりしのぶの根

材料となるシノブは深山の沢近く、日の当たらない切り立った崖や古木の梢に多く自生しているものを採集します。3月にはつりしのぶの組み立てを始めます。割り竹や木炭、杉板などの芯材をコケで包み、芽の出る前のシノブの根をはわせます。次にエナメル線の銅線で芯同士を固定させ、屋形船や井桁などの形に組み上げ、シュロ縄の持ち手をつけます。できたものはビニールハウスの栽培棚で発芽を待ち、4月上旬に外に出し、よしずを屋根にした棚に吊るして成長させます。

つりしのぶ

毎年5月に開かれる『お富士さんの植木市』(浅草浅間神社の植木市)や、毎年7月に開催される浅草寺の『ほおずき市』などで、その年の新しいつりしのぶが販売されます。それら植木市に加え、江戸川区の「金魚まつり」といったイベントやデパートで、展示販売を行っています。


つりしのぶの世話


「筏」

つりしのぶを吊るす際は、直射日光の当たる場所は避けます。コケが乾いてきたら、上からジョウロで水をかけるのではなく、バケツの水につりしのぶ全体を2 ~ 3 分沈めます。10 月頃、葉が枯れたら、2~3日陰干しした後に、乾いた新聞紙などに包み、さらにビニール袋で包んで密封して保管します。葉が枯れていても根は生きつづけており、春の桜の開花時期に日の当たる場所に出して水を与えれば、残った根から再び芽が出ます。条件が良ければ、5年以上も長持ちします。


つりしのぶの多種多様なデザイン

つりしのぶ
「井戸」

つりしのぶの形には大小さまざまなものがあり、「屋形船(やかたぶね)」や「灯籠(とうろう)」、「筏(いかだ)」、月に雲がかかった「霞(かすみ)」、「亀」、「帆掛け船」「井桁(いげた)」などが一般的で長く親しまれてきました。人気の高い「井戸」は、現在、東京で唯一つりしのぶを作っているつりしのぶ工房「萬園」の深野晃正(てるまさ)氏のオリジナル作品です。「井戸」は吊るさず机の上に置くこともできるタイプで、軒先のない住宅の居間や小料理店のカウンターなどに置いても楽しめます。

つりしのぶ
えどがわ伝統工芸産学公プロジェクト「金魚としのぶ」

深野氏は、江戸川区無形文化財保持者です。萬園では伝統的な形のものに加え、干支に似せたものや、金魚鉢と組み合わせたものなど独自のものも作っており、年間で約3000個ものつりしのぶを製作しています。近年では、江戸川区の伝統工芸者と女子美術大学が連携し、新しい伝統工芸製品を創る事業である「えどがわ伝統工芸産学公プロジェクト」を通じて、美術大学生がデザインした新作も毎年作られています。

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