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 地域資源紹介

油脂製品
花王石鹸吾嬬工場(現、東京工場)

油脂製品

■指定されている場所:墨田区

明治時代、墨田地域では、靴、石鹸、カバン、セルロイド、メリヤスなど様々な分野の工場が集まり、日本の工業地帯のさきがけとなりました。この地域には隅田川につながる水路が縦横に張り巡らされていて水運が発達し、工場に必要な大量の水の入手が容易で、広い工場用地が準備できるといった利点がありました。この地域で発達していた皮革産業の副産物として油脂が手に入りやすかったため、食用・工業用油脂の製造業や、油脂を原料に用いる石鹸製造業が発達しました。やがてこうした工場の中から後に大手となる石鹸・洗剤メーカーが生まれていきました。

初期の石鹸の歴史

昔の日本では、「ムクロジ」の果皮や「サイカチ」の莢(さや)、米の「とぎ汁」、木灰を水に浸した上澄み液の「灰汁(あく)」などを洗濯に用いていました。また、顔や体を洗うためには「米ぬか」が用いられていました。安土桃山時代に、西洋から石鹸が伝来しましたが、きわめて高価なため庶民に広まることはありませんでした。日本で最初に石鹸を製造したという記録が残っている人物は、日本で最初の本格的な化学書である『舎密開宗(せいみかいそう)』を書いた宇田川榕菴(ようあん)で、1824(文政7)年、養父の蘭方医・宇田川玄真(号は棒斎)と共に石鹸を医薬品として製造しました。


石鹸産業の歴史

日本で最初に民間の石鹸工場を始めたのは、横須賀造船所の工事監督だった堤磯右衛門(つつみ いそえもん)で、1873(明治6)年、横浜に日本最初の洗濯石鹸および化粧石鹸の製造所を創業しました。同時期に日本各地で石鹸の製造が始まりました。しかし、当時は、日本製のものは品質において劣っており、品質の良い石鹸といえば海外からの輸入品でした。そこで、輸入品に負けない石鹸作りの研究が進められました。その国産石鹸製造の拠点となったのが本所・向島地域でした。

油脂製品
原料油脂精製装置(花王石鹸)

1876(明治9)年に堀江小十郎が、粗悪石鹸をなくすことを目指して、向島に「鳴春舎(めいしゅんしゃ)」という石鹸工場を作りました。この鳴春舎の職人であった石鹸炊きの名人・村田亀太郎は、のちに長瀬富郎(とみろう)の元で働くようになり、長瀬商店(現、花王株式会社)に石鹸作りの技術を伝えました。1890(明治23)年、長瀬商店は国内初のブランド石鹸「花王石鹸」を発売し、1923(大正12)年には、 墨田区内に大規模な「吾嬬町工場」を操業しました。鳴春舎の支配人であった小林富次郎は、「小林富次郎商店」(現・ライオン株式会社)を創業し、後に「ライオン歯磨」・「ライオン石鹸」を発売します。1911(明治44)年には、日本で初めてチューブ入ねりハミガキ「ライオン煉歯磨」を売り出しています。福原有信は、1872 (明治5)年に民間初の洋風調剤薬局「資生堂」を創業しましたが、1912(明治45)年には、若山太陽舎という石鹸製造会社と合同で、寺島村(現在の墨田区西部)に「資生堂石鹸」を創立しました。

油脂製品
資生堂石鹸新美術缶入(昭和初期)

また1892(明治25)年、本所に「芳誠舎」という石鹸会社が設立。後の「玉の肌石鹸株式会社」になります。このように、石鹸業界の初期の歴史において墨田地域は重要な役割を果たしていました。戦後、土地の値段の安い地方に移転する工場も多く、墨田区において中小の油脂・石鹸メーカーは大きく数を減らしましたが、現在も昔ながらの製造方法を守ったメーカーや、無添加石鹸を作り続けているメーカーがあります。

油脂製品
資生堂石鹸(昭和50年代頃)


UCオイルのリサイクル

UCオイルとは、「廃食用油」(Used Cookig oil)のことです。墨田区には外食レストランなどの飲食店、お弁当店、学校給食、食品工場などで使用済みとなった食用油をリサイクルし、様々な油脂製品を造る会社が幾つもあります。2017(平成29)年において、国内の食用油の年間消費量は合計約234万トンに上ります。そのうち、外食産業や食品工業では約197万トン使用されています(残りの約36万トンが一般家庭で使用されています)。この約197万トンのうち、UCオイルが42~44万トンも生じます。このUCオイルのうち約60%の25~27万トンが、畜産用の配合飼料に添加されています。さらに、石鹸、塗料、インキなどの工業用に7~8万トン(約17%)、そしてBDFやボイラー燃料などの燃料および燃料輸出用に6.5~7万トン(約16%)が利用されています。BDFとは、バイオディーゼル(Bio Diesel Fuel)のことで、廃食用油などを精製・加工してディーゼルエンジン用の燃料にしたもので、化石燃料の代替燃料として期待されています。BDFは硫黄酸化物をあまり含まないため、軽油と比較すると、亜硫酸ガスなどの硫黄酸化物の排出を減らすことができて排気ガス対策に有効です。一般家庭で使用される約36万トンの食用油のうち、UCオイルとして9~11万トンが発生します。そのUCオイルのうち、0.5~1万トンがBDFや石鹸として再利用されていますが、まだ9~10万トンが古新聞等にしみこませたり、凝固剤で固めてゴミとして廃棄されているため、そのほとんどは有効に利用されていません。各地の自治体では、「回収ステーション」を設けるなどの取り組みが進められています。今後さらにこうした動きが広まることが期待されています。

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