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 地域資源紹介

サルトリイバラ

サルトリイバラ

■指定されている場所: 三宅村

「サルトリイバラ」は、ユリ目サルトリイバラ科(ユリ科との説もある)に属する落葉ツル性の低木です。別名「山帰来(サンキライ)」とも呼ばれ、日当たり、水はけが良い場所を好み、山野や丘陵の林縁や林内などに自生します。北海道から九州までの日本全土、朝鮮半島、中国、東南アジアまで広く分布し、三宅島にも古くから野生のサルトリイバラが多く自生しています。

葉が愛らしいハート型をし、徳島県などでは「端午の節句の柏餅の葉」として使われています。茎は、節ごとにジグザグに折れ曲がり、枝にはトゲがあり、和名「サルトリイバラ」は、このイバラ状の茎や枝に野生のサルも引っかかったという言い伝えによる「猿獲りイバラ」に由来しています。果実は、7~10mmの球形で秋に熟すと赤く色づき、硬い茎(つる)と赤い実「クリスマスリース」としても利用されています。



生命力の強いサルトリイバラ


三宅島は2000(平成12)年に三宅島雄山(814m)山頂から噴火が発生し、土石流、火山性ガスの影響で島の約6割以上の森林が消滅して荒廃地となりました。この噴火災害では、三宅島の全島民が島外避難となりました。
その後、約4年半に渡る島外避難を経て、島の災害復旧支援のために島外から訪れた人々が強風吹き付ける荒廃地の山腹で目にしたのは、他の草木よりいち早く茎を伸ばし成長する「サルトリイバラ」の姿でした。荒れ地に育つその姿は、噴火災害で甚大な被害を受けた島の復興への希望と力を与えるものでした。


サルトリイバラを三宅村の新たな産業に

サルトリイバラ

噴火災害復興事業のために、神奈川県横浜市から訪れた一人である石森良房氏(現・株式会社伊豆緑産 代表取締役)は、火山性ガスの中で育つ生命力の強いこのサルトリイバラに着目し、「サルトリイバラによる山の緑化事業」に取り組み始めました。
噴火以前より島の人たちは、サルトリイバラの実が赤く色づく12月頃になると、野生のサルトリイバラを切り枝にし、三宅島の花として出荷していました。しかし年末近い短い期間だけのものであり、通年化して販売できないことが課題となっていました。

サルトリイバラ

石森氏は三宅村役場へ出向き、サルトリイバラによる緑化事業についてや島の緑化再生への熱意を伝え、その結果、雄山山腹の約6.7haに及ぶ村有地が貸与されることが決まり「三宅島復興サルトリイバラ事業」として苗木栽培を始めることとなりました。
この事業は、2006(平成18)年の林野庁補助事業「林業山業創出支援事業」優良プランにも認められ、さらに、大阪の研究機関がサルトリイバラの薬効成分に着目し、健康食品として開発研究をスタートさせました。

サルトリイバラを活用し商品企画

サルトリイバラ
赤い実を使ったクリスマスリース

株式会社伊豆緑産では、サルトリイバラの認知度を上げるために切り花のインターネット通販や、サルトリイバラTシャツなどのお土産品などを企画し、さらに実を焼酎に漬け込んだリキュール酒や乾燥させてお茶に加工したものなども試験販売し、さらに島に訪れた観光客向けに、赤い実を使ったクリスマスリース作り教室なども開催。サルトリイバラの花言葉である「不屈の精神」のごとく、甚大な噴火災害を受けた島の復興に数々の事業が推進されました。
しかしながら現在は、貸与された栽培地の契約期間も終了し、近年の温暖化や降水量の増加による影響などから、サルトリイバラの育成が悪化し、生産量を減らした従来からの切り花出荷のみにとどまっています。また健康食品事業でも、研究が前に進まず、事業化は止まったままの状態です。
そうした状況でも株式会社伊豆緑産の石森良房氏は、初めて三宅島を訪れ火山性ガスの中で育つサルトリイバラを目にしたときのことが忘れられないと話します。サルトリイバラの花言葉は「不屈の精神」。サルトリイバラの事業化に関わり15年以上が過ぎ、島民の高齢化や未知数の健康食品事業など課題は多いのですが、今もなお、不屈の精神で苗木を育てるため、畑の管理を続けながら事業継続に向け取り組んでいます。

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