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 地域資源紹介

あしたばの画像

あしたば

■指定されている場所:大島町、新島村、三宅村、八丈町、利島村、神津島村、御蔵島村、青ヶ島村

今日摘んでも、あしたには新しい芽が出るといわれるほど成長が早い「あしたば(明日葉)」は、八丈島を原産とするセリ科の多年草です(そのため八丈草とも呼ばれていました)。あしたばは、温暖な気候で雨が多く、水はけがよい土壌を好みますが、伊豆諸島はちょうどあしたばが生育するのに適しています。他にも、房総半島から紀伊半島と伊豆諸島の太平洋岸の海岸に自生しています。葉は冬も枯れずに常緑で厚くツヤがあり、葉の縁は鋸歯状(きょしじょう)、つまりギザギザの形をしています。茎は太く、丈の高さは1mに達します。芽を出してから2?3年で茎のてっぺんに傘を開いたような小さな白い花をたくさん咲かせます。伊豆諸島では、特産品として畑で栽培され、秋頃に種をまいて春には急成長します。初夏と秋がもっとも収穫の多い季節です。

あしたばは、江戸の昔には「あしたぼ」「あしたぐさ」と呼ばれ、天然痘の治療に用いられていたことが、当時の文献に出ています。貝原益軒の『大和本草』にも、滋養強壮に効く薬草として挙げられていました。
あしたばの茎を切ると切り口から黄色い汁がしたたり落ちますが、伊豆七島の人は昔は切り傷や虫さされ、水虫に、この黄色い汁をつけて治療していました。この黄色い汁の色素のもとになっているのはカルコンと呼ばれている物質で、近年、このカルコンには、がんの増殖・転移や血栓の予防、アレルギーの抑制など、すぐれた薬理作用があることが知られるようになりました。また、カルコンには、末梢神経障害を緩和する作用があることが確認されているため、糖尿病の予防・改善作用が期待されています。ちなみに、あしたばに外形がよく似ているハマウドは、切り口からは白い汁が出るのであしたばとはすぐに見分けがつきます。ハマウド(別名オニウド)もあしたばと同様に海岸の草地に生えますが、ハマウドの方が大きく成長します。
伊豆諸島では「あしたばを食べていると胃の調子が良くなる」という言い伝えがありました。あしたばに含まれるカルコンには、胃酸の分泌抑制作用もあることが明らかになってきています。さらに、カルコンには抗菌作用があることも知られています。
あしたばに含まれる別の成分であるクマリンには、神経成長因子(NGF)の生産を増やす働きがあり、あしたばには抗認知症作用が期待されています。 ちなみに、あしたばの独特の苦味はクマリンによるものです。この苦味を和らげたいのであれば、高温によってクマリンが分解されるてんぷら料理が向いています。苦味を味わいたいのであれば、さっとゆでておひたしにすると良いでしょう。

伊豆諸島のお店で食事をすれば、あしたばを椿油で揚げたてんぷら料理や、あしたばを練りこんだそばやうどんを味わうことができます。さらに、あしたば茶や、あしたばを用いたお餅やクッキー、ゼリーなどのお菓子を土産物店で求めることができます。加えて、あしたばは「青汁」やサプリメントの原料としても活用されています。
伊豆大島では、牛の乳の出をよくすると言われて乳牛の牧草としても栽培されています。このようにあしたばは、伊豆諸島の島民のみならず牛にとっても貴重なビタミン源となっていると共に、その薬効が健康増進におおいに寄与しています。

あしたばはセリ科の植物ですが、セリ科といえば、トウキ(当帰) 、サイコ(柴胡)、ジャショウシ(蛇床子)、センキュウ(川?)のように生薬として用いられるものも多く、またウイキョウ、アニス、コリアンダーなどの独特な香りをもつハーブも多く見られます。
あしたばの学名は Angelica keiskeiといいます。属名のAngelicaは、セイヨウトウキ(西洋当帰、英語では Angelicaアンジェリカ)に付けられた名前で、西洋では古くから天使のように治癒効果があるとして、「天使のハーブ」とも呼ばれていました。

あしたばの画像

種小名のKeiskeiは、明治初期の植物学者「伊藤圭介(けいすけ)」に敬意を表して命名されました。伊藤圭介はシーボルトに師事した植物学者・医師で、リンネの植物分類法を日本で初めて紹介し、「日本植物分類学の始祖」とも呼ばれています。

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