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 地域資源紹介

八重根のメットウ井戸

八重根のメットウ井戸

■指定されている場所:八丈町

メットウ井戸は、八丈島の八重根港の近く、八丈富士の南側の山麓にあるすり鉢状の井戸。上部の直径は約20m、下部の踊り場の直径は6~8m、深さ8mと現地の説明板に記されています。踊り場の中央には直径約80cmのコンクリート製の管が埋められ、踊り場からの井戸の水面までの縦井戸の深さは約3.8mあります。現在、この縦井戸は土砂が流入し埋没してしまいましたが、踊り場からさらに約5mほど深く掘られていると言われています。斜面は土砂が崩れないように石垣となっており、地表から下まで歩き易いように小さな石段が30段、粗く組まれています。

メットウ井戸の利用

八重根のメットウ井戸
メットウ井戸のコンクリート製の管

この井戸の水は、島の住民の飲料水として、また畜産や養蚕・酒造などの産業用水として、そして寄港する船に給水する水として大変貴重な存在でした。明治初期から水道が敷設される1955(昭和30)年まで、使用されていました。

メットウ井戸の碑

井戸の途中には「就労碑」と呼ばれる石碑が置かれています。高さ約82cm、幅約52cmの玄武岩製で、表面には「明治□□□/菊池孫三郎/西濱兼三郎/川上平兵衛/大賀郷一同人員参千七百八名」と刻まれています(□は、磨耗が激しいために読めない部分)。この碑からは井戸が作られた正確な年代を確定することができませんが、地元の人々の口伝によれば、1880(明治13)年頃に掘削されたと伝わっています。就労碑の近くには「水神様」が祀られています。八重根のメットウ井戸は大型で保存状態も良く、昔の八丈島の水事情を理解するために役立つ遺跡として、東京都指定文化財とされています。

メットウ井戸とまいまいず井戸・下り井

メットウ井戸のように、すり鉢状に地面を掘り、さらに底部の踊り場の部分で普通の縦井戸を掘るという二重構造になった井戸は、東京都や埼玉県西部の武蔵野台地、および式根島や八丈島でのみ見つかっており、場所によって「まいまいず井戸」(まいまいとは「かたつむり」のこと)や「下り井」と呼ばれています。

ギンタカハマと八丈島

メットウ(ギンタカハマ)
メットウ(ギンタカハマ)
撮影協力 東京都島しょ農林水産総合センター 八丈事業所

ちなみに、メットウとは八丈島の方言でサザエ科の巻貝である「ギンタカハマ」Tectus pyramis)のこと。メットウ井戸が、巻き貝を逆さにした形に似ていることから名付けられました。メットウは別名「ヒロセガイ(広瀬貝)」。大型の食用貝で、他の伊豆七島にも生息していますが、八丈島が最も多く採れ、昭和初期には輸出用の缶詰が造られるほど漁獲量が多い時期もありました。


メットウのボタン
撮影協力 東京都島しょ農林水産総合センター 八丈事業所

缶詰製造に伴って多量の貝殻が生じたため、貝殻を円形に打ち抜いて真珠色のボタンを作る工場も登場しました。八丈島の神湊にある東京都島しょ農林水産総合センターの八丈事業所・水産庁舎には、メットウの貝殻を酸処理して真珠層を露出させた標本や、メットウの缶詰、メットウのボタンが展示されています。八丈島で採れる巻き貝にはたくさんの種類がありますが、八丈島にとってなじみの深いメットウが、井戸の名称に用いられたのです。

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