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地域産業資源紹介


江戸扇子

指定されている場所:江戸川区

「江戸扇子(せんす)」は、骨の数がおよそ25〜35本と多く雅(みやび)な柄が特徴の「京扇子」に対し、骨の数が15~18本と少なく折幅の広い、質素・倹約を旨としていた武家文化から生まれたシンプルで粋な柄が特徴の扇子です。扇子を閉じる時にパチッと音がするのも江戸扇子ならではです。

扇子の歴史

折りたたみのできない団扇(うちわ)の歴史は極めて古く、古代エジプトの王であるファラオのために七面鳥の羽でできた大きな団扇を扇ぐ姿が遺跡の壁画にも残されています。また、古代中国では「翳(さしば、又はさしは)」と呼ばれる団扇のような道具がありましたが、扇ぐためでなく、貴人の顔を隠すために用いられました(高松塚古墳の『西壁女子群像』にも、翳が描かれています)。折りたたみのできる扇子は、日本で最初に作られたと考えられています。当時は紙を張った扇子ではなく、「木簡(もっかん)」、つまり長さ約30cm、幅2〜3cmの檜(ひのき)の薄い板を束ね、端に穴を開けて紐を通して縛った「檜扇(ひおうぎ)」という木製の扇子です。風を送るものではなく、儀式の手順の覚え書きを記した、いわば平安時代のメモ帳のようなもので、宮中の儀式は冬が多かったため、檜扇は「冬扇」とも呼ばれました。やがて五本の木製の骨に片面だけ紙を張った「蝙蝠扇(かわほりおうぎ)」が生まれます。これは夏に涼むために用いられたため「夏扇」とも呼ばれました。蝙蝠扇とは、広げた時の形が蝙蝠(こうもり)の羽を広げた姿に似ていたことから名付けられました。

扇子の構造

扇は、「扇骨(せんこつ)」すなわち骨に、「扇面」と呼ばれる紙を張ってできています。扇骨のうち、扇子を開いたときに両端になる太い扇骨のことを「親骨」、その間のものを「中骨」といいます。骨は竹や木でできており、高級なものでは象牙や鼈甲が使われています。古い藁葺(わらぶ)き屋根の民家の屋根裏や天井に使われていた竹を「煤竹(すすだけ)」といい、囲炉(いろり)の煙で燻(いぶ)されているため、扇骨に用いると独特の色艶が出ます。女性用の扇子の中には、親骨を漆で塗ったものもあります。また、扇骨が鉄でできた「鉄扇(てっせん)」は戦国時代に戦を指揮するのに用いられ、また武器にもなりました。

数本から十数本の扇骨を束ね、固定する部分のことを「要(かなめ)」といいます。これは「肝心要(かんじんかなめ)」という言葉の由来となっています。また、長期間使用しない時に扇を閉じて保管するための和紙の帯紙のことを「責(せめ)」といいます。

扇子の種類

扇子には、涼むために用いる「持扇」や日本舞踊や歌舞伎などで使う「舞扇(まいおうぎ)」、能や狂言の舞台で使われる「仕舞扇」、部屋に飾るための「飾り扇」、落語家が用いる「落語扇(らくごせん)」、茶席で用いる小さな「茶扇」、結婚式の時にのみ用いる「婚礼扇」など、用途に応じてさまざまな大きさや形、絵柄のものがあります。「持扇」は、一般的な携帯用の扇子です。「男持ち」(男性用の扇子)は大ぶりの7.5寸(約22cm)が標準です。「女持ち」(女性用の扇子)はやや小さめで軽く、6.5寸(約19.5cm)がよく作られています。

江戸扇子の新たな試み

扇面に描かれる絵柄には、友禅の刷師が刷った江戸小紋などのパターン柄や、絵師によって描かれた一点物の描き絵などがあります。江戸川と区無形文化財保持者で、都内で江戸扇子を製作しているわずか数名の職人のうちの一人である松井宏氏は、伝統的な絵柄の扇子を製作すると同時に、「えどがわ伝統工芸産学公プロジェクト」を通じて、多摩美術大学や女子美術大学、東京造形大学の学生たちとコラボレーションした作品も手がけています。

「グラデーション扇子」
東京造形大学の美大生とのコラボレーション作品

「舞桜」
女子美術大学の美大生とのコラボレーション作品

江戸扇子の製作工程

江戸扇子の大まかな製作工程は次の通りです。「扇面加工」は、「地貼り」ともいい、長紙(表紙)・芯紙・長紙(表紙)の3枚の和紙を貼り合わせて扇面を作ります。「平口開け」は、金べらを芯紙の真ん中に差し入れて、扇子の骨が入るための入り口(平口という)を約1cmほど開けます。「折り」は、折り目のついた2枚の型紙に扇面の紙をはさみ、型紙の折り目に合わせて蛇腹に折ります。「中差し」は、平口のところから差し竹を差して、骨を通す穴に通します。「接込み(せっこみ)」は、折りを接込台に3~4日はさんで折り目を落ちつかせます。「真切り」は、扇面の上下の余分な紙を切ります。「先染め」は真切りした天の切り口に金色の顔料を染めます。「吹き」は、骨を通す穴に向かって息を吹きこんで、穴を広げます。「中づけ」は、骨の先端を扇面の大きさに合わせて切り揃え、糊をつけて穴に1本ずつ差し込みます。「荒打ち」は、竹べらで骨の並びを整え、拍子木でたたいて折り地と糊を落ち着かせます。「先摘み」は、剪定鋏(せんていばさみ)で親骨を切り揃えます。「矯め(ため)」は、電熱器で親骨を熱して柔らかくし、扇面を包み込むように内側に反らせて、扇子を閉じたときに収まりが良くなるようにします。「親つけ」は、親骨を磨いて整え、親骨と扇面を糊づけしてから親骨の頭を削って形を整えます。

扇子の製作工程はさらに細かく記述すれば全部で約30以上にのぼります。京扇子では、それぞれの工程は分業化されているため、大勢の専門の職人の手をわたりながら徐々に作り上げられていきますが、江戸扇子では、それらの工程を一人の職人がこなしています。


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